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8月9日(月) [矛盾について(その13)]

 少し違う観点から。
 ユダヤ人は「パレスティナはユダヤ人の土地だ」と主張しますが、アラブ人は「パレスティナはアラブ人の土地だ」と主張します。これは先ほどの矛盾した約束とは違い、「邪馬台国は九州にあった」と「邪馬台国は近畿にあった」の対立と同じように見えます。つまり事実の記述をめぐる対立のように見えます。としますと、どちらが正しいかは事実と合致するかどうかで決まりますから、証拠となる事実を探し出すことが肝心です。さてしかし何が証拠となるのか。はるか紀元前の昔、ここにユダヤ人の王国があったことは歴史的事実です。しかし王国滅亡後、幾多の変遷があり、アラブ人たちが長い間ここを故郷としてきたこともまた歴史的事実です。そこに例のイギリスの約束があり、世界中に散らばっていた多くのユダヤ人が帰ってきてイスラエルという国を作った。
 さてさて困りました。邪馬台国論争でしたら、いずれ重要な考古学上の発見があり、論争に決着がつく可能性がありますが、この件に関しては、どんな新発見があっても、それによって紛争に幕が下りるという事態は考えられません。実はこれは事実をめぐる争いではないからです。「パレスティナはユダヤ人の土地だ」という言説は事実を述べているのではなく、権利を主張しているのです。「ユダヤ人はパレスティナの所有権を主張できる」と言っているのです。「パレスティナはアラブ人の土地だ」も「アラブ人はパレスティナに住む権利がある」と言っているのです。どちらも事実を記述しているのではなく、自分たちの意思を表明しているのです。
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