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11月1日(月) [矛盾について(その96)]

 森岡氏は脳死の人を前にして、彼はもう意識がなくなっていて、こちらから声をかけても聞こえるはずがないのに、どうして声をかけたくなるのかと問い、それは脳死の人の中に何かがあるからに違いない、それは何かと追及します。犯人捜しの旅が始まるのですが、それは終ることのない旅です。どうやら追及の方向が逆なようです。森岡氏の場合、ベクトルは「自分から脳死の人へ」向かっていますが、このベクトルはどこまでも続いていかざるをえない宿命にあります。しかし「脳死の人から自分へ」のベクトルは、その来し方は霧の中にあるにしても、自分に届いたところが終点です。それは紛れもなく自分に到達して、そこでthe endです。
 森岡氏の場合は、こちらから声をかけることに力点がありますが、向こうから声がかかることに重心をおくべきです。こちらから声をかけるのは、それに先立って向こうから声が聞こえるからです。ぼくは電話が苦手で、できるだけ電話をかけないで済ませるのですが、どうしても電話せざるを得ないときがあります。それは向こうからしきりと声がするときです。ある人の顔が浮かんで、何かを言ってくる。それは耳に聞こえる声ではありませんが、紛れもなくぼくに呼びかけています。それに応えざるをえなくてぼくは受話器をとります。ですから、そのとき「もしもし」と呼びかけても、実は向こうからの呼びかけに「はいはい」と応えているのです。
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