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11月24日(水) [矛盾について(その118)]

 太郎の耳に「お前は次郎を押しのけて生きている」と聞こえた声は、やはり次郎から来ているとしか考えられません。次郎の耳に「太郎がこんな目にあえばいいのか」と聞こえた声も、太郎から来たとしか思えません。彼らの口から出たのではありませんが、彼らの存在そのものから出てくるとしか言いようがありません。レヴィナスなら相手の「顔」から出てきていると言うに違いありません。
 太郎に「お前は次郎を押しのけて生きている」と聞こえ、次郎に「太郎がこんな目にあえばいいのか」と聞こえた声は、同時に「そのまま生きていていい」という声でもありました。「こんな自分が生きていていいのか」と悲しみに暮れるとき、「そのまま生きていていい」と言ってくれる声でした。
 としますと、太郎に「そのまま生きていていい」と聞こえる声も次郎から来るとしか考えられません。次郎自身は「そんなことを言った覚えはない」と言うでしょうが、太郎とすれば次郎から、その口からではないが、その存在そのものから来るのです。そしてまた次郎に「そのまま生きていていい」と聞こえる声も太郎から来るとしか考えられません。
 太郎にとって次郎が「あなた」です。また次郎にとって太郎が「あなた」です。それ以外のどこにも「あなた」はいません。
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