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12月19日(日) [矛盾について(その143)]

 「お前は人の席を奪っている」の声が聞こえてきたとき何が起こっているかを改めて考えておきましょう。これまではこの世に悪人もいれば善人もいると思っていました。そして自分は言うと、それほど善人ではないだろうが、まあ人に後ろ指を指されるような悪人でもないと踏んでいました。
 ところが「お前は人の席を奪っている」という声が聞こえてハッとさせられ、「みんな悪人ではないか」と頭を抱え込むことになったのです。これは深い悲しみをもたらします。ところで「お前は人の席を奪っている」と聞こえる声は、実は「みんなにひとしく生きる場所がある」と言っているのでした。「みんなにひとしく生きる場所がある」はずなのに、自分にはあって彼にはない。ということは、自分が彼の生きる場所を奪っていることになると自分を責めていたのです。
 「みんなにひとしく生きる場所がある」は、「まず自分に、しかる後に他のみんなにも」ではなく、「他のみんなに、しかる後に自分にも」です。みんなに生きる場所があってはじめて自分の生きる場所もあるというのです。お気づきのように、これは大乗仏教のエッセンスです。「自分だけの救いはない、みんなが救われてはじめて自分も救われる」、これこそ大乗の菩薩思想です。「みんなに生きる場所があってはじめて自分にも生きる場所がある」―何と有難いことばでしょう。
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