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1月14日(金) [矛盾について(その169)]

 この世の内部にいる限り、その外へ出ることはできないと言いましたが、「しかし実際に己のいのちを絶ってしまった人はもうこの世からいなくなるじゃないか」という反論があるでしょう。でも、それは不思議でも何でもありません。ぼくらが病気や事故でいのちを落とすように、自殺というかたちでいのちを落とすに過ぎないのです。そう答えてもさらに「いのちを落としたら、あの世にいくんだろう?」と言われるかもしれませんが、それには何とも答えようがありません。
 お釈迦さんは「死後の世界があるかどうか?」というある青年の問いに沈黙したまま何も答えなかったそうですが、これがもっとも誠実な答えだと思います。なぜなら、ぼくらはこの世の内部にいる以上、逆立ちしてもこの世の外に出るわけにはいかないのですから、それについては何も語ることができません。そして「語ることができないことについては、沈黙しなければならない」(ヴィドゲンシュタイン)のです。
 「でも、この世の外について思いを巡らすことはできるじゃないか」という声が返ってくるかもしれません。確かにぼくらの先祖たちはこの世の外にあると思われる地獄や極楽についてさまざまに思いを巡らしてきました。
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