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2月12日(土) [矛盾について(その198)]

 〈希望〉ということで思い出すのはフランクルの『夜と霧』です。
 この本は、ナチスの強制収容所という極限状況の中で希望が持つ意味を教えてくれます。いつの日かここから脱け出して家に帰りたいという希望、これこそが考えられる最悪の境遇を耐え忍ばせてくれる力となったということ。この希望を持てなくなった人がどんなにあっけなくいのちを失っていったかを読みますと、ぼくらは希望に支えられて生きているのだという事実を改めて思い知らされます。しかし問題はこんな状況の中で、どのようにして希望を持ち続けることができるかということです。
 いつの日か家に帰りたい。その希望を持つということは、ただ漫然とそう思うということではありません。そのためにはどうすればいいかを考えることです。与えられたわずかのパンをすぐ食べてしまわずに、何度かに分けて食べるようにしなければならない。監視兵の理不尽な懲罰から逃れるために、なるべく目立たないようにしなければならない。規則正しく生活し、なるべく余分のエネルギーを使わないように工夫しなければならない、等々。ところが実際はその正反対のことをしている自分に気づきます。「こうしたい」と思いながら、それを裏切る自分。そして家に帰れる日が近づいているという兆候はどこにもない。そのうち「こうしたい」と思ったってどうにもならないとヤケッパチにならないでしょうか。そんな中でどのようにして希望を持ち続けることができるのでしょうか。
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