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3月8日(火) [矛盾について(その222)]

 世界の外に出ることはできないと述べましたが、そのことで想起されるのがカントです。
 カントの偉大さは理性に限界を置いたことです。理性はどこまでも自分の力を外へ押し広げていこうとしますが、そこには自ずと限界があり、もし理性がそれを越えて何かを言おうとすると、そこにはどうしようもない矛盾が生じると言うのです。いまそれを詳しく述べることはできませんが、一番大事なことに絞ってみておきましょう。
 カントによりますと、理性はこの世界から与えられるさまざまな材料(感覚によって与えられる素材)に秩序を与えて、くっきりとした像を作り出しています。もし理性がこの働きをしてくれなければ、さまざまな材料のごった煮があるだけで混沌そのものです。さてしかし理性が調子に乗って、世界から何の材料も与えられないところでその力を勝手に働かせていきますと、そこにいろいろな形而上学が誕生することになります。これまでの哲学の歴史はそうした形而上学たちが戦いあう戦場であったとカントは言うのです。
 カントはこのように「理性の限界」を強調するのですが、ぼくが世界の外に出ることはできないと言うのも同じ趣旨です。カントが理性の限界外の世界については沈黙したように、ぼくもこの世界の外部については沈黙しなければなりません。
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