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1月1日(日) [矛盾について(その516)]

 あけましておめでとうございます。穏やかな年明けです。今年もよろしくお願い申し上げます。
 今『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(加藤陽子著、朝日新聞社)という本を読んでいます。もうだいぶ前から評判になっているのは知っていたのですが、ようやく手に取りました。日清戦争から太平洋戦争までを振り返り、戦争の道を選んだ日本の歴史を高校生(といっても、かなりレベルの高い生徒たちですが)を相手に分かりやすく語っている本です。まだきちんとまとまった言葉にはなりませんが、とりあえずこの本から感じたことを述べておきたいと思います。
 まず題名の「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」という言い回しです。この「日本人」というのは誰のことかということ。何となく日本人総体が戦争の道を選んでいったような印象を与えるのですが、本当にそうなのか。本の中にたくさん歴史上の人物が登場し、それぞれがどのような考えを持っていたかが紹介されていて、それはそれで大変おもしろいのですが、その人たちは政治家であり、軍人であり、要するに日本の針路を決める立場にあった人たちです。その人たちが戦争の道を選んだのは間違いのないことですが、一般の庶民も含めて「日本人」が戦争を選んだと言えるのでしょうか。
 歴史を作る人たちと、歴史に巻き込まれる人たちとの間には深い溝があるのではないか。そしてこの本は歴史を作る一部のエリートたちの立場から書かれているのではないかという印象を持ちました。一般の庶民たちにとって、戦争は選ぶも選ばないもなく、気がついたら戦争に巻き込まれていたといった感じではないでしょうか。いや、一般庶民が声なき声で戦争を支持したからこそ、エリートたちは国民を戦争へと駆り立てることができたのだという考え方もあり、ここには難しい問題が潜んでいますが、ともあれ戦火の中を逃げ惑わなければならない庶民たち(大陸や太平洋の島々の庶民たちのことも忘れてはなりません)がいたことは紛れもない事実です。

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