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矛盾について(その541) ブログトップ

1月26日(木) [矛盾について(その541)]

 秋葉原事件の犯人加藤青年は現実世界ではきれいごとを語ることしかできず、ようやく掲示板の中で本音を出すことができたのです。では彼は掲示板にどんなことを書き込んでいたかといいますと、特徴的な持ちネタが二つあり、一つは自虐ネタ、もう一つは不謹慎ネタでした。
 自虐ネタというのは、たとえばこんなふうです、「ゴールデンウィークに田舎に戻りました。楽しい一人旅です。ラジオだけが友達です」。あるいは「一人でカラオケです。5人は入れる部屋です」。不謹慎ネタはというと、「ゲームセンターでゲームしていないのにイスに座っている人間をポアしていいですか」などというものです。
 興味深いのは、これらの本音は決して本心ではないということです。「建前と本音」といいますと、建前はきれいごとであるのに対して、本音は思っていることそのままと理解してしまいますが、実は本音と本心はまた別なのです。
 彼は自虐ネタとして自分がいかに不細工で、女性にもてないかを繰り返し書き込んでいますが、本当のところはそれほど不細工だと思っているわけではありませんし、「一人旅」も「一人でカラオケ」も、事実そのままではなく、かなりデフォルメしているのです。また「ポアしていいですか」も、気に入らない人を殺していいと本気で思っているわけではありません。掲示板にときどき彼を慰めたり説教したりする人が現われますが、それは彼にとって哀れな勘違いでしかありません。これらはあくまで「ネタ」であって、ネタをネタとして受け取ってほしいのです。

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