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矛盾について(その546) ブログトップ

1月31日(火) [矛盾について(その546)]

 一番印象的なのが「つなぎ」をめぐる騒動です。これが無差別殺人事件の引き金になるのですが、自動車工場の派遣社員として職場でつなぎに着替えようとしたところ、いつもの場所に見当たりません。そこで彼のパターンが現われます。ハンガーにかけてあったつなぎを全部床にぶちまけ、持っていた缶コーヒーを壁に投げつけて、そのまま寮に帰ってしまうのです。
 そして掲示板に書き込みます、「作業場に行ったら、つなぎがなかった。辞めろってか」。驚いた上司が彼のつなぎを探しますと、床にぶちまけられた中に彼のものがすぐ見つかります。帰った彼を追って、つなぎが見つかったから戻るように説得しますが、彼はもう聞く耳を持ちません。
 つなぎ事件の少し前に派遣社員に対する解雇通知があり、その期限がまた1ヶ月延期されるなどの経緯があって、道具のように扱われることに対する怒りが渦巻いていたのは確かですが、それにしてもこれはあまりに典型的なキレパターンです。「あれ、つなぎがないぞ」と思っても、見落としているかもしれないと落ち着いて探しなおすのが普通でしょう。それでもなければその旨を会社の人に申し出るでしょう。しかし彼にはそれをするこころのゆとりがない。怒りの暴走を食い止められないのです。荒れた高校に勤めていた頃のことを思い出します、そんな生徒がたくさんいたなあと。
 ここで少し立ち止まりましょう。建前と本音、そして本心を区別しました。建前はもちろんですが、本音といえども本心そのままではありません。本心をオブラートに包んで飲みやすくしているのです。それができず、生の本心をそのままぶつけるのがキレることに他なりません。

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