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4月15日(日) [矛盾について(その621)]

 親鸞を読んでいますと、「横超」というおもしろいことばに出会います。よこっ飛びに超えるということですが、このことばの元は善導の「横に四流(生老病死)を超断せよ」にあります。「たてさまに超える」に対して「よこさまに超える」のです。
 ことばのイメージで言いますと、「横」は、勝手気ままで正しくないという感じがあります。「よこしま」と言いますし、横着、横柄、横領、横暴と、どう見ても芳しいイメージではありません。
 「たてさま」に生死を越えるといわれますと、真っ暗な海をはるか彼方に見える灯台を目指して必死に泳ぐ姿が眼に浮かびますが、一方「よこさま」に越えるとなりますと、どんなイメージでしょうか。
 「よこさま」で頭に浮かぶのは、どういうわけか、「ふりむけば愛」という映画のタイトルです。若かりし頃の妻が三浦友和のファンで、彼の出る映画がかかると、名古屋の映画館まで観にいくという熱心さでした。「どんな映画?」と聞いてみますと、その内容はありきたりの青春恋愛物語ですが、ぼくはといいますと、このタイトルを何となく「いいな」と思ったのです。
 ふとふりむくと、そこには愛があった。ああ、もうすでに愛があったのだと気づく。ここが「いいな」と思ったのですが、これが「よこさま」です。たてさまに一途に愛を追求するのではなく、ふとよこを向くと、そこはもう愛の世界。すでに愛が成就していることに気づくのです。


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