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はじめての『教行信証』(その28) ブログトップ

2013年8月25日(日) [はじめての『教行信証』(その28)]

 つつしんで浄土真宗を案ずるに、二種の廻向あり。一には往相、二には還相なり。往相の廻向について、真実の教行信証あり。
 「謹んで浄土の真実の教えを考えてみますと、二種類の廻向、すなわち如来からの賜物があります。一つは往相廻向で、われわれが浄土へ往生させていただくということ、もう一つは還相廻向で、われわれがこの穢土にあって衆生のために働かせていただくということです。そして往相廻向について、真実の教と行と信と証があります。」
 のっけから大きな壁が立ちはだかります。二種類の廻向があるというのですが、そもそも廻向とは何か。
「廻らし向ける」ということで、普通はわれわれが積み上げた徳を誰かのために(仏や亡くなった人のために)廻らせるという意味に使います。一生懸命貯金して、それを誰かに送金するというイメージです。ところが親鸞の手にかかると、このイメージが反転するのです。
 ここはまだ書物の取っ掛かりですから、この文章からそのことを理解するのは無理というものですが、ずっと読んでいきますと、親鸞が廻向ということばを使うとき、普通の廻向とはそのベクトルが逆さまであることに気づきます。
 われわれが仏に廻向するのではなく、仏からわれわれに廻向してくださるのです。親鸞は一貫してこの意味で廻向ということばを使っているということ、これを忘れずにいたいと思います。ですから廻向ということばが出てきましたら頭の中で「仏からの恵み」「仏からの賜物」と置き換えるといい。

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