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龍樹という人 [『正信偈』を読む(その71)]

           第10章 悉く能く有無の見を摧破せん

(1)龍樹という人
                10
 釈迦如来楞伽山(しゃかにょらいりょうがせん) 釈迦如来、楞伽山にして、
 為衆告命南天竺(いしゅごうみょうなんてんじく) 衆のために告命したまわく、「南天竺に、
 龍樹大士出於世(りゅうじゅだいじしゅっとせ) 龍樹大士、世に出でて、
 悉能摧破有無見(しつのうざいはうむけん) 悉(ことごと)く能(よ)く有無の見を摧破せん。
 宣説大乗無上法(せんぜつだいじょうむじょうほう) 大乗無上の法を宣説し、
 証歓喜地生安楽(しょうかんぎじしょうあんらく) 歓喜地を証して安楽に生ぜん」と。
 
 (現代語訳)「釈迦如来が楞伽山において人々に向かってこう説かれた、『これより後、南インドに龍樹大士が世に出て、有にとらわれた考え方、また無にとらわれた考え方を悉く打ち砕くであろう。また大乗のこのうえない真実の教えを説き、不退転の境地を得て歓喜し、安楽浄土に往生するであろう』と。」

 いよいよ龍樹に入ります。釈迦は「無我」を説きましたが、龍樹はそれは「空」ということばで言いあらわしました。仏教を勉強しようと思ったら、この龍樹の空の思想を避けて通るわけにはいきません。高校の『倫理』の教科書にもナーガールジュナという名で登場し、空の思想家として紹介されますし、日本の仏教はどの宗派もこの人を開祖と仰ぎ、「八宗の祖師」と讃えられます(八宗とは三論宗、成実宗、法相宗、倶舎宗、華厳宗、律宗、天台宗、真言宗)。


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