宇宙からのメッセージ

（８）宇宙からのメッセージ

　第２章に「親鸞にをきては、ただ念仏して弥陀にたすけられまひらすべしと、よきひとのおほせをかぶりて、信ずるほかに別の子細なきなり」とあり、その後に「たとひ法然聖人にすかされまひらせて、念仏して地獄におちたりとも、さらに後悔すべからずさふらふ」という有名なことばが出てきます。これは親鸞の法然に寄せる信頼の大きさをあらわすものと解釈されます。
　それはそれで間違いないことですが、しかしこのことばにはそれにとどまらないもっと深い意味が含まれているのではないでしょうか。「ただ念仏して弥陀にたすけられまひらすべし」というのが「よきひとのおほせ」であることは紛れもない事実ですが、でも、よきひと＝法然聖人をこえてもっとはるか彼方からこの「おほせ」がやってくると感じられていると思うのです。
　ぼくらが「あっ、これは真実のことばだ」と感じるときというのは、そのことばは誰かある特定の人が言ったり書いたりしているには違いないのですが、でも、その人を通り越してどこかはるかなところからやってくるように思えるのではないでしょうか。言ってみれば宇宙からやってくるメッセージという感じです。
　先に、高校時代に『歎異抄』に出会い、よく分からないながらも、ここには真実があると思ったと言いましたが、そこに書かれている親鸞のことばに宇宙からのメッセージのようなものを感じたと思うのです。親鸞が法然の「おほせ」に宇宙のメッセージを感じたように、ぼくも親鸞のことばに宇宙のメッセージを感じ、だから「ここに真実がある」と思った。
　そして、もうひとつ言えば、親鸞が法然の「おほせ」に宇宙のメッセージを感じたとき、法然自身も自分の発することばに宇宙のメッセージを感じていたと思います。自分が言っているのに違いないのですが、でもははるか遠くからやってきたことばが自分の口をついて出ているという感じではないでしょうか。
　われわれも親鸞の口を通して語られる宇宙のメッセージを聞き取ってまいりましょう。

　　　　　　　　　　　　　　　（第１回　完）

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