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仏教史概観 [はじめての『高僧和讃』(その2)]

(2)仏教史概観

 龍樹、ナーガールジュナは南インドに生まれたバラモンで、紀元後150年から250年の人とされます(彼の生涯は伝説のなかに霞み、ぼんやりとしか分かりません。なにしろ日本でいえば卑弥呼より前の人です)。彼が南インドの国、サータヴァーハナ朝の国王にあてた手紙が残されていますが(『親友への手紙』)、その題名にもありますように、親しい友に対するようなその語り口から、非常に高い位にあって尊敬されていたことがうかがえます。さて龍樹はバラモン教から部派仏教へと進み、さらには大乗仏教の代表的な指導者(八宗の祖)になっていきます。
 ここで仏教の歴史を概観しておきましょう。
 仏滅(紀元前383年)後およそ100年のころ、教団(サンガ)の戒律を巡って、保守的な考えの上座部と革新的な大衆部に分裂することになります。その後さらに上座部・大衆部それぞれのなかが多くのグループに分かれ、ついには20もの部派が生まれます。そして紀元前後のころになりますと、出家した比丘たちの教団とは別の在家仏教信者の中から新たな革新運動が起こってきます。それは、自分たちの悟りしか頭にないこれまでの独善的な部派仏教を否定し、慈悲の精神から一切衆生の救いをめざすものでした。
 己れの救いよりも前に、一切衆生の救いをめざす菩薩道を称揚し、これを大きな乗り物、大乗と名のったのです(そしてこれまでの部派仏教を小さな乗り物、小乗と貶すことになります)。そして、その考えのもとに多くの大乗経典がぞくぞくと編纂されていきました。『般若経』、『法華経』、『維摩経』、『華厳経』、そして『無量寿経』などの浄土経典がそれです。龍樹はこれらの大乗経典に大きな影響を受けますが、とりわけ『般若経』が彼のこころをとらえました。

タグ:親鸞を読む
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