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偈文13 [正信偈と現代(その112)]

            第13回 天親-煩悩の林に遊んで

(1)偈文13

 帰入功徳大宝海(きにゅうくどくだいほうかい)  功徳大宝海に帰入すれば、
 必獲入大会衆数(ひつぎゃくにゅうだいえしゅしゅ) 必ず大会衆の数に入ることをう。
 得至蓮華蔵世界(とくしれんげぞうせかい)     蓮華蔵世界に至ることを得れば、
 即証真如法性身(そくしょうしんにょほっしょうしん)即ち真如法性の身を証せしむ。
 遊煩悩林現神通(ゆうぼんのうりんげんじんずう)  煩悩の林に遊んで神通を現じ、
 入生死薗示応化(にゅうしょうじおんじおうげ)   生死の薗に入りて応化を示す。

 (現代語訳) 天親菩薩は『浄土論』の中で、次のように言われます、「弥陀本願の功徳の海に入ることができましたら、そのとき必ず浄土の聖衆の仲間に数えられます。そして蓮華の世界である浄土に至ることができましたら、ただちに真如法性の身とならせていただくのです。しかしそのまま浄土にとどまることなく、娑婆の煩悩世界に戻ってきては、神通の力を発揮して生死の迷いの中にいる衆生のために働かせていただくのです」と。

 ここで言われていることを理解するためには、『浄土論』の成り立ちをおおよそにでも頭に入れておかなければなりません。この書物は二つの部分に分かれ、前半は「願生偈」とよばれる偈文で、後半はそれをみずから解説する散文(長行‐じょうごう‐)からなっています。「願生偈」の冒頭には「世尊、われ一心に尽十方無碍光如来に帰命したてまつりて、安楽国に生ぜんと願ず」という帰敬偈がおかれ、続いて『無量寿経』にもとづいて、安楽国の国土、そこにおわす阿弥陀仏、そして菩薩たちについて詠いあげられます。
 そして長行で「この願偈はなんの義をか明かす」と述べた上で、どうすれば「かの安楽世界を観じて阿弥陀仏をみたてまつる」ことができるかとして、五つの行(五念門)を上げます。それが礼拝・讃嘆・作願・観察・回向の五行(弥陀仏を礼拝し、その名を口に称え、浄土に往生せんと念じ、国土・仏・菩薩を観察し、一切衆生とともに往生したいと願う)です。そして長行の最後に、五念門に対応して五功徳門が説かれます。近門(ごんもん)、大会衆門(だいえしゅもん)、宅門(たくもん)、屋門(おくもん)、園林遊戯地門(おんりんゆげじもん)で、ここで親鸞が詠っているのはこの五功徳門のことです。

タグ:親鸞を読む
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