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性信房あての手紙 [親鸞の手紙を読む(その86)]

(2)性信房あての手紙
 
 『末燈鈔』を切り上げまして、次に『親鸞聖人御消息集』に進みます。『親鸞聖人御消息集』には全部で18通収められていますが、そのうち8通は『末燈鈔』と重複しますので、残るのは10通です。この『消息集』で注目されるのは、いわゆる善鸞義絶事件に関連する手紙が多く入っていることです(第7通、第9通、第10通、第11通、第12通、第13通)。この出来事の本質は何だったのか、これらの手紙を読むことで浮かび上がってきます。
 さて、この手紙は性信房に宛てて書かれています。性信房については、第2回のところで述べましたように、東国の念仏者たちの中心にあった一人ですが、はっきり性信房に宛てられた手紙として残っていますのは次の5通です。

1. 『末燈鈔』第3通  正嘉元年(1257年)10月10日 親鸞85歳
2. 『親鸞聖人御消息集』第7通  7月9日
3. 『親鸞聖人御消息集』第13通 (日付けなし)
4. 『親鸞聖人血脈文集』第2通  5月29日
5. 『親鸞聖人血脈文集』第4通  9月7日

 1の手紙は、すでに読みましたように(第3回)、純粋に教え(現生正定聚)についての内容ですが、あとの4通は「鎌倉にての御うたへ」に関すること(2,3,5)、善鸞義絶に関すること(4)で、互いに深くつながっています。おそらく4通とも同年に出されたものと思われます。その手がかりになるのが4の手紙で、親鸞はこの手紙で善鸞を義絶したことを性信房に報告しています。そして善鸞本人に宛てて義絶を通告する手紙が残っていまして(『古写消息』6)、その日付けが建長8年5月29日となっています。4の手紙も同日に性信房に宛てて書かれたと思われますから、2~5の手紙はすべて建長8年(1256年、親鸞84歳)だと考えていいでしょう。

タグ:親鸞を読む
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