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『教行信証』精読2(その63) ブログトップ

本文3 [『教行信証』精読2(その63)]

(10)本文3

 つづいて『往生要集』から短い文が二つ引用されます。ひとつは先と同じく大門第四、正修念仏から、もうひとつは大門第十、問答料簡(もんどうりょうけん)からです。

 またいはく、「波利質多樹(はりしったじゅ、忉利天にあるという香木)の華、一日衣に薫ずるに、瞻匐華(せんぷくげ、香木)、波師迦華(はしかか、強い香気をもつ木)千歳薫ずといへども、及ぶことあたはざるところなり」と。以上
 またいはく、「一斤(いっこん)の石汁(錬金術に用いる薬)よく千斤の銅(あかがね)を変じて金(こがね)となす。雪山(せっせん、ヒマラヤ)に草あり、名づけて忍辱(にんにく)とす。牛もし食(じき)すればすなはち醍醐(牛乳を精製してえられるもっとも美味なるもの)を得。尸利沙(しりしゃ、ねむの木のこと)、昴星(ぼうせい、すばる)を見ればすなはち菓実を出すがごとし」と。以上

 (現代語訳) またこうあります、波利質多樹の華を一日ころもに薫じますと、瞻匐華や波師迦華を千年薫じてもそれに及ぶことはありません。
 またこうもあります、一斤の石汁は千斤の銅を金に変えることができます。またヒマラヤにある忍辱という草は、牛がそれを食べますとたちまち醍醐を出します。また尸利沙は、すばるを見れば菓実をつけますが、念仏の功徳もそのようなものです。

 いずれの文も念仏がもたらす不思議な力をさまざまな譬えで表現しています。

タグ:親鸞を読む
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