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本文1 [『教行信証』精読2(その127)]

         第8回 円融満足極速無碍絶対不二の教なり

(1)本文1

 一乗海について、曇鸞の文につづいて、善導と宗暁(しゅうぎょう)の文が引用されます。

 光明師(善導)のいはく、「われ菩薩蔵(小乗の声聞蔵に対して、大乗の教えを収めた蔵)頓教(とんぎょう、漸教‐ぜんぎょう‐に対して、すみやかに証を得る教え)一乗海による」と。
 またいはく、「『瓔珞経(ようらくきょう)』のなかには漸教を説けり。万劫に功を修して不退を証す。『観経』・『弥陀経』等の説は、すなはちこれ頓教なり、菩提蔵(菩薩蔵)なり」と。以上
 『楽邦文類』にいはく、「宗暁禅師のいはく、還丹(かんたん、錬金術に用いる薬)の一粒は鉄(くろがね)を変じて金(こがね)と成す。真理の一言は悪業を転じて善業と成す」と。以上

 注 南宋の宗暁が編集した楽邦(浄土)に関する要文集。宗暁は親鸞とほぼ同世代の人であり、親鸞は中国の最新の書物にも目を通していたことが分かる。

 (現代語訳) 善導大士は『観経疏』「玄義分」においてこう言われます。わたしは大乗の教えに帰依し、すみやかに証を得ることのできる教えに帰依し、すべての人が分け隔てなく乗ることのできる誓願一仏乗に帰依します、と。
 また『般舟讃』ではこうも言われます。瓔珞経には一歩一歩悟りをめざす教えが説かれていて、その教えでは、限りない修行の末に不退の位に至ることができます。しかし観経や阿弥陀経などにはすみやかに悟りに至る大乗の教えが説かれています、と。
 『楽邦文類』において宗暁禅師がこう言われます。還丹はたった一粒で鉄を黄金に変えてしまいますが、そのように名号という真理の一言は、悪業をたちまち善業へと変えてしまいます、と。

 ここでは誓願一乗海の教えは頓教であることが述べられていますが、なかでも宗暁の「真理の一言は、悪業を転じて善業となす」が印象的です。

タグ:親鸞を読む
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