(4)第11回、本文2
最後の利行満足(りぎょうまんぞく、自利利他の行が満足し完成すること)の章に入ります。
利行満足とは、〈また五種の門ありて、漸次に五種の功徳を成就したまへりと、知るべし。なにものか五門。一つには近門、二つには大会衆門、三つには宅門、四つには屋門、五つには園林遊戯地門なり〉(浄土論)とのたまへり。この五種は、入出の次第の相を示現せしむ。入相のなかに、初めに浄土に至るは、これ近相なり。いはく大乗正定聚に入るは、阿耨多羅三藐三菩提に近づくなり。浄土に入りをはるは、すなはち如来の大会衆(阿弥陀仏の説法の座に列する大衆)の数に入るなり。衆の数に入りをはりぬれば、まさに修行安心の宅に至るべし。宅に入りをはれば、まさに修行所居の屋宇に至るべし。修行成就しをはりぬれば、まさに教化地に至るべし。教化地はすなはちこれ菩薩の自娯楽(衆生教化を己の楽しみとする境地)の地なり。このゆゑに出門を園林遊戯地門と称すと。
菩薩は五念門という五つの自利利他行を修めることにより、五功徳門という五つの果を得ることになります。五念門と五功徳門は一対一対応しています。つづく文に出てくることを先取りすることになりますが、表に示しておきましょう。
〈五念門〉 〈五功徳門〉
礼拝門 ―― 近門
讃嘆門 ―― 大会衆門
作願門 ―― 宅門
観察門 ―― 屋門
回向門 ―― 園林遊戯地門
五功徳門のなかで前の四つが自利の門(入の門、往相)であるのに対して、最後の園林遊戯地門が利他の門(出の門、還相)です。