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12月12日(月) [矛盾について(その496)]

 更新が遅れました。 

 『シズコさん』の最後のところを少し抜き出してみましょう。呆けてしまった母が入っている老人ホームを訪ねたときのことです。

  そして思ってもいない言葉が出て来た。
  「ごめんね、母さん、ごめんね」
  号泣と云ってもよかった。
  「私悪い子だったね、ごめんね」
  母さんは、正気に戻ったのだろうか。
  「私の方こそごめんなさい。あんたが悪いんじゃないのよ」
   …
  私はほとんど五十年以上の年月、私を苦しめていた自責の念から解放された。
  私は生きていてよかったと思った。本当に生きていてよかった。こんな日が来ると思っていな
 かった。母さんが呆けなかったら、昔のまんまの「そんな事ありません」母さんだったら、私は 素直になれただろうか。

 佐野洋子はこれを言うために、それまでのドロドロを書かなければならなかったのです。「ごめんね、母さん、ごめんね」のひと言が母と娘の双方を救った。

 思い出したことがあります。高校教師時代のことです。

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