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矛盾について(その544) ブログトップ

1月29日(日) [矛盾について(その544)]

 現実の中にはつくれなかった本音の関係(帰る場所)が掲示板の中にあると思えていた間はよかったのですが、そこにも「荒らし」(乱雑に書き込み、見にくくすること)や「なりすまし」(ニセモノの登場)という障害物が現われ、そのうちもう誰からもレスがこなくなります。かくして彼はウエブ世界にも帰る場所がなくなったと感じ、ついに無差別殺人へと跳躍してしまうのです。
 ここにはしかしまだ「どうして?」という疑問が残ります。事件の後、彼への共感が広がるということは、彼と同じように本音の関係をつくれず、帰る場所がないと感じている若者が多いことを示していますが、そうした人がみな無差別殺人に走るわけではないでしょう。なぜ彼はそうしなければならなかったのか、もう少し考え続けたいと思います。
 加藤智大という人はキレキャラであったということ、ここに焦点を合わせてみましょう。キレるというのは怒りの発作をコントロールすることができないことですが、誰でも多かれ少なかれキレそうになる瞬間はあるでしょう。よく出す例ですが、食べもの屋に入って注文し順番を待っているとき、後から来た客に先に料理が運ばれてくると、何だか無性に腹が立ちます。自分が否定されているような気がするのです。実際のところは店員さんがうっかり順番を間違えただけでしょうから、それをことばで指摘してあげればいいことなのですが、自分でもどうしょうもないほど激昂してしまい、もう怒りを抑えることができなくなって、何も言わずにプイと店を出てしまう。これがキレるということです。

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