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「信巻を読む(2)」その113 ブログトップ

殺もまたかくのごとし。凡夫は実とおもふ [「信巻を読む(2)」その113]

(4)殺もまたかくのごとし。凡夫は実とおもふ

釈迦の説法は核心に近づいてきます。

大王、たとへば幻師(魔術師)の四衢道(しくどう、街の四つ角)の頭(ほとり)にして、種々の男女・象・馬・瓔珞・衣服(えぶく)を幻作するがごとし。愚痴の人はおもうて真実とす。有智の人は真にあらずと知れり。殺(せつ)もまたかくのごとし。凡夫は実とおもへり、諸仏世尊はそれ真にあらずと知ろしめせり。大王、たとへば山谷(せんこく)の響きの声(やまびこのこと)のごとし。愚痴の人はこれを実の声とおもへり。有智の人はそれ真にあらずと知れり。殺もまたかくのごとし。凡夫は実とおもへり、諸仏世尊はそれ真にあらずと知ろしめせり。大王、人の怨(あだ)あるが、詐(いつわ)り来りて親附(しんぷ、親しげに近づく)するがごとし。愚痴の人はおもうてまことに親しむとす、智者は了達(はっきり知る)してすなはちそれ虚しく詐(いつわ)れりと知らん。殺もまたかくのごとし。凡夫は実とおもふ、諸仏世尊はそれ真にあらずと知ろしめせり。大王、人鏡を執りてみづから面像を見るがごとし。愚痴の人はおもうて真の面とす、智者は了達してそれ真にあらずと知れり。殺もまたかくのごとし。凡夫は実とおもふ、諸仏世尊はそれ真にあらずと知ろしめせり。大王、熱のときの炎(かげろうのこと)のごとし。愚痴の人はこれはこれ水とおもはん、智者は了達してこれ水にあらずと知らん。殺もまたかくのごとし。凡夫は実とおもはん、諸仏世尊はそれ真にあらずと知ろしめせり。大王、乾闥婆城(けんだつばじょう、蜃気楼のこと)のごとし。愚痴の人はおもうて真実とす、智者は了達してそれ真にあらずと知れり。殺もまたかくのごとし。凡夫は実とおもへり、諸仏世尊はそれ真にあらずと了知したまへり。大王、人の夢のうちに五欲(色・声・香・味・触の五境に対する欲、または財欲・色欲・飲食欲・名欲・睡眠欲の五欲)の楽を受くるがごとし。愚痴の人はこれをおもうて実とす、智者は了達してそれ真にあらずと知れり。殺もまたかくのごとし。凡夫は実とおもへり、諸仏世尊はそれ真にあらずと知ろしめせり。大王、殺法(殺害の方法)・殺業(殺害の行為)・殺者(殺害する人)・殺果(殺害の結果)および解脱(それから逃れること)、われみなこれを了(さと)れり。すなはち罪あることなけん。王、殺を知るといへども、いかんぞ罪あらんや。大王、たとへば人主ありて酒を典(つかさど)れりと知れども(酒のことは何でも知っているとしても)、もしそれを飲まざればすなはち酔はざるがごとし。また火を知るといへども焼燃せず。王もまたかくのごとし。また殺を知るといへども、いかんぞ罪あらんや。大王、もろもろの衆生ありて、日の出づる時において種々の罪を作る、月の出づる時においてまた劫盗を行ぜん。日月(にちがつ)出でざるにすなはち罪を作らず。日月によりて、それ罪を作らしむといへども、しかるにこの日月実に罪を得ず。殺もまたかくのごとし。乃至


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