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矛盾について(その240) ブログトップ

3月30日(水) [矛盾について(その240)]

 宇宙船が絶望的な状況にあるとき、奇蹟的に交信が回復したとしましょう。地球からの呼びかけが聞こえてきます、「きみの位置を確認しました。そしてトラブルの原因も判明しました。これからの指示に従って修復作業に入ってください」と。ぼくの「いる」ことが受け止められたのです。これはどれほどの喜びでしょう。
 「これで生きているといえるのか」という不安にあったときに、「きみが生きていることは確認した」と言ってもらえたのです。「生きて帰ってこい」と励ましてもらったのです。当然ぼくは指示に従って宇宙船の修理に全力を上げることでしょう。そして、ここが肝心ですが、たとえその修理がうまくいかず、そのうち生命維持装置が作動しなくなっても、それはそれでいいと思えるのではないでしょうか。
 再び生きる希望が見えたのですから、何とかして生き抜こうとするでしょう。しかしこれまでのように「いなくなる」ことへの耐え難い恐怖にさらされることはないと思うのです。地球ではぼくを何とかして帰還させてやろうと全力を挙げてくれています。ぼくの帰還を待ってくれているのです。それさえあれば、たとえ故障が直らずいのちが絶えてしまってもそれはそれで仕方がないと思えるのではないでしょうか。
 いま「いる」ことが肯定されさえすれば、「いずれいなくなる」ことをこころ静かに受け入れることができると思うのです。

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