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「信巻を読む(2)」その146 ブログトップ

五逆とは [「信巻を読む(2)」その146]

(12)五逆とは

最後に五逆とは何かについて、永観(平安期の三論宗の僧)の『往生十因』から引かれます。


五逆といふは、「もし淄洲(ししゅう、中国法相宗の第二粗・()(しょう)のこと)によるに五逆に二つあり。一つには三乗(声聞乗・縁覚乗・菩薩乗の三つの教え)の五逆なり。いはく、一つにはことさらに思うて(故意に)父を殺す、二つにはことさらに思うて母を殺す、三つにはことさらに思うて羅漢(阿羅漢、仏弟子の最高階位)を殺す、四つには倒見して(誤った考えから)和合僧(サンガ、僧の集団)を破す、五つには悪心をもつて仏身より血を出(いだ)す。恩田(恩を被った父母)に背き福田(仏法僧の三宝)に違するをもつてのゆゑに、これを名づけて逆とす。この逆を執するものは、身破れ命終へて、必定して無間地獄に堕して、一大劫のうちに無間の苦を受けん、無間業と名づく。また『倶舎論』のなかに、五無間の同類の業あり。かの頌(じゅ、偈文)にいはく、〈母・無学(もう学ぶことがない)の尼を汚す、母を殺す罪の同類。住定(じゅうじょう、無漏定に住する)の菩薩、父を殺す罪の同類。および有学(うがく、まだ学ぶことがあるもの)・無学を殺す、羅漢を殺す同類。僧の和合縁を奪ふ、僧を破する罪の同類。卒都波(そとば、ストゥーパ、塔のこと)を破壊(はえ)する、仏身より血を出す〉と。

二つには大乗の五逆なり。『薩遮尼乾子経(さっしゃにけんじきょう)』に説くがごとし。〈一つには塔を破壊し経蔵を焼(ぼんじょう)する、および三宝の財物を盗用する。二つには三乗の法を謗りて聖教にあらずというて、障破留難(しょうはるなん、仏法を攻撃し危害を加える)し隠蔽覆蔵(おんぺいふぞう、仏法を覆い隠して広まらないようにする)する。三つには一切出家の人、もしは戒・無戒・破戒のものを打罵(ちょうめ)し呵責(かしゃく)して、過(とが)を説き禁閉し還俗せしめ、駆使債調(くしさいちょう、労役を課し、債務や税を負担させる)し断命(だんみょう)せしむる。四つには父を殺し、母を殺し、仏身より血を出し、和合僧を破し、阿羅漢を殺す。五つには謗じて因果なく(普通は「因果を謗無し」と読む)、長夜につねに十不善業を行ずるなり〉と。以上 かの『経』(十輪経)にいはく、〈一つには不善心を起して独覚(縁覚のこと)を殺害(せつがい)する、これ殺生なり。二つには羅漢の尼を婬する、これを邪行といふなり。三つには所施の三宝物を侵損する、これ不与取(ふよしゅ、与えられていないものを盗る)なり。四つには倒見して和合僧衆を破する、これ虚誑語(こおうご、嘘偽り)なり〉」と。略出 


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