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未生怨(みしょうおん) [「信巻を読む(2)」その127]

(4)未生怨(みしょうおん)

釈迦に報復を誓った提婆達多は、再び阿闍世のもとに姿をあらわし、父王の殺害を唆します。

時に提婆達多、すなはち起(た)ちて善見太子の所に往至す。善見見をはりてすはなはち聖人(提婆達多)に問はく、〈なんがゆゑぞ顔容(げんよう)憔悴して憂への色あるや〉と。提婆達多いはく、〈われつねにかくのごとし。なんぢ知らずや〉と。善見答へていはく、〈願はくはその意(こころ)を説くべし。なんの因縁あつてか、しかる(どういうわけでそんなに顔色悪く、憂えておいでになるのですか)〉と。提婆達のいはく、〈われいまなんぢのために、きはめて親愛をなす。外人(宮廷外の人)なんぢを罵(の)りて、もって非理とす(道理から外れたものと罵っている)。われこの事(じ)を聞くに、あに憂へざることを得んや〉と。善見太子またこの言をなさく、〈国の人いかんぞわれを罵辱(めにく)する〉と。提婆達のいはく、〈国の人なんぢを罵りて未生怨(みしょうおん、いまだ生まれざる時に父に怨を抱いていた者)とす〉と。善見またいはく、〈なんがゆゑぞわれを名づけて未生怨とする。たれかこの名をなす〉と。提婆達のいはく、〈なんぢいまだ生まれざりし時、一切の相師(占い師)みなこの言をなさく、《この児生れをはりて、まさにその父を殺すべし》と。このゆゑに外人みなことごとくなんぢを号して未生怨とす。一切内の人(宮廷内の人)、なんぢが心を護るがゆゑに、いうて善見とす。毘提夫人(びだいぶにん、韋提希)この語(占い師のことば)を聞きをはりて、すでになんぢを生まんとして、身を高楼の上よりこれを地に棄てしに(高楼から地上に生み落としたが)、なんぢ一つの指を壊(やぶ)れり。この因縁をもつて、人またなんぢを号して婆羅留枝(ばらるし、指の折れた者)とす。われこれを聞きをはりて心に愁憤(しゅうふん)を生じて、またなんぢに向かひてこれを説くことあたはず〉と。提婆達多、かくのごときらの種々の悪事をもつて、教へて父を殺さしむ。〈もしなんぢが父死せば、われまたよく瞿曇沙門を殺さん〉と。


タグ:親鸞を読む
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