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五つの救いの門 [『正信偈』を読む(その91)]

(2)五つの救いの門

 五功徳門といいますのは、近門(ごんもん)、大会衆門(だいえしゅもん)、宅門(たくもん)、屋門(おくもん)、園林遊戯地門(おんりんゆげじもん)の五つで、それがここで親鸞流に短いことばで表現されています。
 「功徳大宝海に帰入すれば」が近門、
 「必ず大会衆の数に入ることを獲」が大会衆門、
 「蓮華蔵世界に至ることを得れば」が宅門、
 「即ち真如法性の身を証せしむ」が屋門、
 「煩悩の林に遊んで神通を現じ、生死の薗に入りて応化を示す」が園林遊戯地門。
 五念門が「行」、一心が「信」、そしてこの五功徳門が「証」といえるでしょう。行も信も如来から回向され、その結果として証が与えられるということですが、気になるのが五功徳門相互の関係です。互いに位階があり、まず近門、そして大会衆門へ、さらに宅門というように一つひとつ階段を上がっていくというイメージがあります。
 そして、もうひとつ言いますと、近門と大会衆門は今生、宅門と屋門そして園林遊戯地門は来生という具合に割りふられ、さらに言えば、近門と大会衆門は娑婆、宅門と屋門は浄土、そして園林遊戯地門は再び娑婆というように舞台転換があるようにも思えます。
 今生と来生、娑婆と浄土の難問については後で考えるとしまして、そもそも救いにこのような位階があっていいものでしょうか。それでは他力の根本に抵触するのではないかと思うのです。もう一度その根本に戻りますと、「あるとき思いがけず向こうから与えられている」のが他力でした。あるいは「気がついたらもうすでに与えられていた」のが他力。としますと、他力には位階とか段階はないはずです。


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