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偈文2 [「『正信偈』ふたたび」その65]

(5)偈文2

さて天親讃の後半六句です。

帰入功徳大宝海 必獲入大会衆数 

得至蓮華蔵世界 即証真如法性身 

遊煩悩林現神通 入生死薗示応化

功徳大宝海(本願の海)に帰入すれば、かならず大会衆(だいえしゅ、浄土の仲間)の数に入ることを獲。

蓮華蔵世界(浄土)に至ることを得れば、すなはち真如法性の身を証せしむと。

煩悩の林にあそんで神通を現じ、生死の園にいりて応化(おうげ、衆生済度のためさまざまな姿を取ること)を示すといへり。

天親菩薩は『浄土論』の後半(長行)において、次のように言われています、「弥陀本願の功徳の海に入ることができましたら、かならず正定聚の中に数えられます。

そして蓮華の世界である浄土に至ることができましたら、そのとき真如法性の身になることが約束されます。

しかしそのまま浄土にとどまることなく、娑婆の煩悩世界に戻ってきては、神通の力を発揮して生死の迷いの中にいる衆生のために働かせていただくのです」と。

前半六句で本願力回向により「一心」(本願と一つである信心)を得ることが述べられましたが、さてそのときどのような世界が開けるかが後半六句で詠われます。天親は「願生偈」をみずから解説する「長行」において五念門と五功徳門を上げていますが、五念門と言いますのは、われらが信心を得て往生するための五つの行すなわち礼拝・讃嘆・作願・観察・回向のことで、五功徳門は五念門のそれぞれによって得られる五つの功徳すなわち近門(ごんもん)・大会衆門・宅門・屋門・園林遊戯地門(おんりんゆげじもん)のことです。そして五功徳門のうち前の四つは自利の功徳で、最後の一つは利他の功徳だとします。

それによりますと、第一門・近門とは「安楽世界に生ずることを得」ること、第二門・大会衆門とは「大会衆(浄土での阿弥陀仏の法会につらなるもの)の数に入ることを得」ること、第三門・宅門とは「蓮華蔵世界に入ることを得」ること、第四門・屋門とは「かの所に到りて種々の法味楽を得」ること、そして第五門・園林遊戯地門とは「大慈悲をもつて一切苦悩の衆生を観察して、応化身を示して、生死の園、煩悩の林のなかに回入して遊戯し、神通をもつて教化地に至る」ことだとされます。


タグ:親鸞を読む
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