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11月2日(火) [矛盾について(その97)]

 道で誰か知らない人とすれ違うとき、思わず「こんにちは」と声をかけることがありますが、それはその人から「こんにちは」の声が聞こえてきたからではないでしょうか、耳には聞こえない声で。見知らぬ人からの「こんにちは」が心地よくて、思わず「こんにちは」と返してしまう。
 そのとき、この心地よい声は何だろう、どこからやってきたのだろうと詮索するでしょうか。こちらからその声の正体を突き止めようとするでしょうか。確かにその人の口から出たのではなく、不思議と言えば不思議ですが、でもその声が自分のこころにズシンと届いたことは疑いありませんから、この声は何だろうという問いは不要ですし、現にそんなふうにこころは動きません。
 ではどんなときにこの問いが生まれるのか。そこに疑いがかすめるときです。ほんとうに声が届いたのだろうか、それは錯覚ではないだろうかと。そんなときに、その声はどこから来たのだろう、それを発しているのは一体何ものかという問いが立ち上がるのです。自分自身がほんとうに感じたかどうか、聞こえたかどうか、ここが分かれ道です。
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