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幽霊は存在するか [『唯信鈔文意』を読む(その39)]

(10)幽霊は存在するか

 ぼくはこう言いました。キュブラー=ロスが勝れた精神科医であることに異論はないが、その彼女が「幽霊をまざまざと見た」と証言しても、それだけで幽霊が存在するということにはならない。そのためには誰でも幽霊を見ることができるという条件がなければならないが、あの本を読む限り、そういう条件が示されているとは思えないと。
 それに対してスピリチュアル系の彼はこう主張します、キュブラー=ロスが嘘をついていないとすれば(それはあなたも同意するだろう)、彼女が「幽霊を見た」と言っているのに、あなたはどういう資格でそれを否定できるのか、と。ある人が「わたしは幽霊を見た」と言っているのに、そんなことはないと否定するのは横暴ではないかと言うのです。
 ここには不幸なすれ違いがあると感じました。
 ぼくは彼女が何か尋常ならざる経験をしたことは同意します。そんなことはなかったとは決して言いません。でも、彼女が見たものが幽霊であるということについては同意できないのです。それに同意するためには、こうすれば誰でも幽霊を見ることができるという条件を示す必要があると言っているのです。
 ことは客観的かどうかに関わります。
 あるものが存在するためには、それをある人が確認するだけでなく、誰でも確認できるということが必要であり、それが客観的ということです。実際にみんなが確認する必要はありませんが、そうしようと思えば誰でも確認できるということが大事なのです。これは科学の原則ですが、ぼくらが日常的に議論するときにも踏まえなければならないことではないでしょうか。


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