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「『正信偈』ふたたび」その13 ブログトップ

偈文2 [「『正信偈』ふたたび」その13]

(4)偈文2

「南無阿弥陀仏」に戻りますと、これは「阿弥陀仏に南無(帰命)します」ということですが、阿弥陀仏という仏とは、ある不思議な「はたらき」に他ならないことを見てきました。それは「いのちあるものを漏らさず救わん」と願うはたらきです。親がわが子に「幸せに生きよ」と願うように、生きとし生けるものみなに「安心して生きよ」と願う、これが阿弥陀仏の本願です。

その本願に帰命するということは、本願をしっかり受けとめ、それを糧として生きるということです。「帰命」とは「命に帰する」ということですが、それより前に本願が「帰せよと命ずる」ことであり、本願の方から「安心して生きよ」と呼びかけられるから、それに「ありがとうございます」と応えているのです。「本願に生かされてありがたいことです」という表明が「南無阿弥陀仏」です。

さて弥陀の本願はどのようにしてできたか、そこから話がはじまります。

法蔵菩薩因位時 在世自在王仏所

覩見諸仏浄土因 国土人天之善悪

建立無上殊勝願 超発希有大弘誓

五劫思惟之摂受 重誓名声聞十方

法蔵菩薩の因位(いんに)の時、世自在王仏の所(みもと)にましまして、

諸仏浄土の因、国土人天の善悪を覩見(とけん、見る)して、

無上殊勝の願を建立し、希有の大弘誓を超発せり。

五劫これを思惟して摂受(しょうじゅ)す。重ねて誓ふらくは名声十方にきこえんと。

法蔵菩薩が仏となって衆生を救おうと思われ、世自在王仏のお力を借りて、

諸仏の国土のいわれやありさま、またそこに住む人たちの様子をご覧になり、

それらにまさる仏国土を建立しようというこの上なく優れた願いを立てられ、世にも稀な大いなる誓いを起こされました。

その誓いの内容を五劫という長い年月をかけて思惟され、四十八の本願としてまとめられたのです。そして、重ねて誓われたのは「南無阿弥陀仏の名号が世界にあまねく聞こえますように」ということでした。

ここに『無量寿経』に説かれている法蔵菩薩の物語(あえて「物語」と言います)が手際よくまとめられています。世自在王仏のとき、「時に国王ありき。仏の説法を聞きて、心に悦予を懐く。すなはち無上正真道の意(菩提心)を発す。国を棄て王を捐てて、行じて沙門となる。号して法蔵といふ」とされ、この法蔵菩薩が自身が仏となるとともに、素晴らしい国土をつくり、そこに一切の衆生を迎えて救いたいという大いなる願いをもつことになったと説かれています。そして法蔵菩薩は世自在王仏に頼み、これまでの仏たちが建てられた浄土の因と果のすべてを見させていただき、それに勝る浄土をつくるために無上殊勝の誓願を立てられたとあります。


タグ:親鸞を読む
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