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「いる」ことはそのまま受け入れるしかない [『唯信鈔文意』を読む(その73)]

(12)「いる」ことはそのまま受け入れるしかない

 いまここに生きていることを「する」ことと了解しますと、それを「ありのままに受け入れる」ことはできません。貧窮に苦しむ人は、少しでも生活にゆとりができるようにしたいと思うでしょうし、下智を恥じる人は、少しでもものを知ろうと努力し、破戒を慙愧する人は、少しでも持戒の人に近づけるよう精進するべきです。
 しかし、どんなふうであれ、いまここに生きて「いる」ことには「これを取り、あれを捨てる」という選択の余地がありません。ただそのまま受け入れるしかない。
 もうすでにここに生きて「いる」ことは選ぶ余地がないと言いますと、そんなことはないだろう、生きて「いる」ことを拒否するという選択があるじゃないかと反論が返ってくるかもしれません。なるほど毎年多くの人がみずからいのちを絶ってこの世から去っていきます。
 でも、それはこれからも生き続けることを拒否しているのであって、もうすでにここに生きて「いる」ことを拒否しているのではありません。もうすでにここに「いる」ことは逆立ちしても拒否できません。そのことの上に、すべてが成り立っているのですから。たとえこれから生き続けることを拒否するとしても、それもここに「いる」からこそ可能なのです。
 「いる」ことは「そのまま受け入れる」しかないということについて、もう少し考え続けたいと思います。
 『まどさん』というとてもいい本があります。童謡「サッちゃん」の作詞家・阪田寛夫が「ぞうさん」の作詞家・まどみちお(昨年、104歳で亡くなりました)について書いた本です。その中に「ぞうさん」についてのまどみちお自身のことばが紹介されています。


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